10 counts , 01 ―――For
『同じ空の下』――――――僕は、信じても良いのか。
あ。机の上に置いてあった携帯電話が明滅した。『新着メール一件あり』。
手馴れた風に開けば、『や、祐介。どーよ最近?』。
・・・うっそ。えっ、で、『電話じゃないの? あ、元気だよ。』。
『じゃないの。昨日したし、文字なら残るでしょ。』
残る。確かに残る・・・遺る。
『成程ね。・・・今何してるの?』
『今? 秘密ーーー★』
秘密にする必要は果たして在るのだろうか。
僕は戸惑いつつも、取り敢えず話題を模索する。
『どうしたの』
・・・我ながら気が遣えていない気がする。
『何も無いよ。ただメルしたいなって思って。』
案の定、とも思える返信なのに、言葉の端々がとても重要な気がしてしまう。
『そっか。』
話題も無くて、勇気も無くて、其れ以上の言葉は送らずにやめた。
彼女からの返信を、多分来るだろうと期待しながら、携帯電話を見つめる。
僕の部屋に在るテレビは深夜の報道番組。
然して興味が在る訳でもなかったけれど、何となく流れで付いている。
繰り返し流れる殺人事件を横目で見ながら、僕はベッドに座って、そして、寝転んだ。
小さな画面には、真実は映されないのだろう。・・・あ。
『もう一時近いのに起きてるんだね。』
『そっちこそ。』
『あたしは、もう寝るの。 明日の為に。』
っ! 思わず握り締めた起き上がった立ち上がった立ち、尽くした。
―――アシタノタメニ。
其の言葉は、余りにも僕に、重い。
何も考えずに気付いたら、夢中で返信していたらしい。
『やめよう。あの、おもいとどまらない?』
『裕介って本当、普通だよねーーー。でも、そこが好き。』
『ありがとう、嬉しいけど、其れよりも』其処まで打って、続け様に着信、
送信ミスかなとも思いながら開いてみる、と。
『御免、決めたんだ。』
其の後、僕は何を彼女に返しただろうか。うまく、返せていただろうか。
明滅するテレビが、
殺人事件を誘拐事件を暴行事件を汚職事件を事件を流していた事だけぼんやりと見ていた。
気がする。
嗚呼、ねぇ、僕は。
彼女に何が出来たのだろう出来るの、だろう。