10 counts , 04   ―――The Songs






 昨日は、聴かずに眠った。聴けずに、というのも、正しいかもしれないけれど。
そして僕は今、オーディオの前で、立ち尽くしている。
CDを入れて、・・・・・・再生ボタンを、押せずに。
今日は予定は無くて、だから一日部屋に籠って聴こうと思っていて、
だけど、踏ん切りがつかない。
これを聴いて、そして僕は、どうすれば良い? 彼女に、何をすれば良い?
今日は土曜日。あの日から、一週間が経った。一週間も、経った。
 「・・・・・・・・・・・・うん」
何に対してか、僕は漸く声を出す、小さく頷く。
きゅっと拳を握った後に、ゆっくりとそしてしっかりと、再生の三角ボタンを押した。
ウィーン、と機械音、CDの回る音がして、
そして、ドラムとベースとギターと、音が重なり始めた。
始まる、そして、崩れる。

 歌詞カードを見つめながら、ヴォーカルの少し中性的な声を聴いていた。
決して高くは無いけれど、低く渋いわけでもない。
そんなに聞き取りにくくもないし、言葉を、はっきりと伝えてくる。
其れは彼の声のせいだろうか、其れとも、歌詞のせいだろうか。
序盤は思っていたよりも軽い感じの、一般的なポップス、という感じだった。
重い言葉や内容を歌うわけでもなく、言葉の使い方は面白いけれど、
絶賛や称賛はしなくても・・・と思う。
しかし四曲目で、其の感想に違和感を覚える。
七曲目辺りから、畳み掛けるように迫ってくる。
そして、聴いてしまった。
 彼らは歌っていた。飄々と淡々と見つめるように。
世間、社会だとか、もう少し近くなって恋人、すきなひとだとか、
そして近くて遠くなって自分、だとか。
決して激しくなんかなくて、まるで当然のように歌っているから、
気付くと聞き流しそうになるのだけれど、きっと聞き流して済ませてはいけないような、
何か、が、其処に在るような気もして。
僕は、ベッドに座ったまま、聴き続けていた。

 此の歌が彼らの楽曲が彼女というわけでは全く以って無いのだけれど。
そんな事は、判っているのだけれど。